とある横御の活動記録

自分の思ったことをテキトーに書きます

夜行列車の新規目的地はなぜブリュッセルばかりなのか

 そろそろ、渡欧したい気持ちなんだが、なかなか海外旅行は難しいまるで世界大戦中のこのご時世、大きなお友達は思いを馳せている分、興味深い情報は普段周ってくる。

夜行列車の運行計画

 発表順に行くと

  • Malmo~Brussels(SJ スウェーデン国鉄による運行)
  • Berlin~Brussels/Paris(Nightjetの運行)
  • Praha~Berlin~Amsterdam~Brussels(Regiojetによる運行)
  • Berlin~Brussels(Moonlight Expressによる運行)

はっきり言わなくてもこの運行本数は過剰である。このうち、Regiojet運行分は運行開始時は週3便で運行するらしいが、いずれは毎日運行を目指すらしい。Berlin~Brusselsは日によっては一日3本運行されることになる。これは、一時期の上野~札幌の北斗星3本時代と同じ本数だ。ちなみに、ベルリンの人口はともかく、ブリュッセルに関しては17万人しか人口がいない。となれば、そこまでベルギー人の利用自体は期待できない。どのくらいの需要があるのか正確には計算できないが、ベルリン~ブリュッセルの直行便のフライトはコロナ前で1日Brussels Airlinesが2便、ライアンエアーが1便の計3便である。160席クラスの飛行機が3便なので単純計算で480席で今は十分ということになる。(乗り継ぎ便もあるにはあるが)

ここまでの感じ

 近年、ドイツのCNLの運行が消えてから一気に盛り返し始めた欧州の夜行列車。しかし、2020年以前はÖBBもNightjetの運行はイタリア方面に力を入れているようで、ベルギーなんか目も向けていない感じだった。しかし、急に2019年の秋からWien/Innsbruck~Brusselsの運行を始め、そこからは矢継ぎ早に新規の運行会社も含めて、運行計画を出し始めた感じだ。

なぜパリ行きではないのか

 ここで、私が疑問に思ったのはなぜブリュッセル行きにそこまで各会社はこだわっているのかという点だ。RegiojetはAmsterdamを経由するため、Brussels行きにするのも分からなくはないが、他の運行会社は別にParis行きにしても問題はなさそうである。パリならば、都市圏の人口も含めれば800万人はいるのでブリュッセルよりも多くの利用者を見込めるはずである。ここで、公式に挙げられている理由としてはMoonlight Expressのみになるが、飛行機に対抗してロンドンからの利用客の需要を見込んでいるかららしい。たしかに、ブリュッセルにはユーロスターが乗り入れているためベルリンからロンドンまで1回の乗り換えで行けるのはとても便利だ。(夜行列車は安全上の問題からユーロトンネルを通れないので、ロンドン行きの設定はできない)ちなみに、ロンドン行きはライアンエアーeasyjetBritish Airwaysを合わして1日12便飛んでいる。まあこれなら、たしかに需要は見込めそうである。

f:id:yokomini:20210409000352j:plain

パリのオオーシャンゼリーゼーって言うところ

飛行機に対抗するにしては......

 それで、飛行機にガッポガッポ持ってかれるのを崩そうというわけだが、所要時間を見てみると飛行機の場合は航空会社や時間帯によって差が出るが、おおむねLondon~Berlinまで2時間以内で飛んでいる。一方の鉄道はと言うと2時間立つとようやくユーロスターがBrusselsに到着するころである。まだ半分も進んでいない。いくら夜行列車な分、夜に移動できるハンデがあるとはいえ時間がかかりすぎである。Brussels~Berlinのみでも現状、高速列車を乗り継いでも最速で7時間を切るのが限界である。夜行列車が300km/hで走れるわけがないので8時間ぐらいは見ておいた方がいいだろう。他のMalmoやWien、Prahaの夜行も10時間を超えているので所要時間はお話にならないが、お話にならない区間でどうやって客を取り合うのかは気になるが

f:id:yokomini:20210409000205j:plain

LCCライアンエアー

 

じゃあやっぱりパリ行きじゃ

 この所要時間ではゆっくり行くようなことが好きな人を少しでも見込める区間で夜行列車を設定したほうがいいんじゃねと一般人は思う。しかし、先に運行を開始したÖBBのNightjetもパリ行きではなくブリュッセル行きの運行を優先させた。ここからは私個人の見解になるので、正しいかは怪しいが(この前のTEE2.0計画も予想を読み間違えたし)付き合っていただけるとありがたい。

SNCFが嫌う在来線特急

 前にも書いたが、SNCFTGVの運行開始以来、TGVの路線網の拡大とそれに付帯する列車(TERのような)の接続の向上に力を入れていた。もちろん、フランスの税金を使って運営が行われているのでフランス内の移動を便利にしようと考えるのは自然な流れだ。また、国際列車も便利で快適?な高速列車にすればフランス人に喜ばれるはずだ。現にSNCFは国際列車は100%TGVになっていてECはイタリアが運行するものは残っているものの、SNCF自体は運行から手を引いている。フランスの周辺諸国を見ているとドイツはICE、ベルギーはThalysを長距離列車の主役にしていることには変わりがないが、両国ともECやICDのような客車の国際列車も存在していて運行に携わっている点や、Brussels~BaselまでのECを追い出したり、トレニタリアのパリ行きの夜行もフランス国内は私鉄の運行会社に委託せざるを得ない状況を見ると、SNCFのやり方は強硬に見える。

SNCFの連携のやり辛さ

 フランス国内で運行するにはフランスの会社に委託するのが一番手っ取り早い(運行許可など)。ではフランス国鉄へと真っ先に思いつくのだが、この会社はさっきも言った通りTGVが大好きである。そんなところにいきなり、ヨーロッパ内で大した運行実績のない新規参入の会社がやってきて「客車列車走らせたいんだけど協力して」と自身の意向と180°逆のことを言ってきたとするとSNCFは首を縦には振らないだろう。それに、さきほどのECを例に挙げたように急に協力を打ち切られる可能性もある。この場合のECはSNCBだが、当然SNCFとSNCBなら旧国鉄同士、昔からの信頼関係もあったはずだ。それでも、ダメなのだから新規参入の会社ならなおさらだろう。またもう一点問題がある。それが国境の通過である。私自身、ベルギーに長年住んでいてフランスとの国境を何回も通過したが、どの路線でも使われているのはベルギー側の車両だった。最初は単にSNCF所有の車両がベルギーの直流電圧に対応していないからだと思ったが、一回だけ救援でベルギー側に乗り入れているのに乗ったので電圧の問題でも信号関係でもない。おそらくフランス側は一般の車両をなるべく出したくはないのだろう。そして、遅延の問題がある。長い距離を走る夜行列車なら遅れも勘案すべきなのだが、SNCFはこれに関しても連携が高速列車以外ではうまく行かない。私の経験上2回、ベルギー側で線路工事があった関係で列車に必ず遅延が発生する事案があった。この時、SNCBは一度目はフランス直通の列車のみ工事の手前の区間で運転を打ちきる策を取り、二度目は完全に系統を分離する作戦に打って出た。これで遅延は当然発生はしないのだが、他の列車は遅れているので乗り継げない客も当然出てくるのだがそんなのお構いなしだ。フランスが側の線路が混んでいるなら話は別だが、走るのは1時間に1本ベルギー側の車両しか走らない区間である。これは予測になるが、フランスに乗り入れる際は運行管理部門が遅延を嫌っているからこのような対策になってしまったのだろうと思う(自国の車両が遅れているのは気にも留めないらしいが)。

 フランスもTEE2.0計画に入ってはいるが、今のところ新たな夜行列車というのはフランスの国内夜行と先述のオーストリア連邦鉄道が運行するNightjetが2本だけで、新規参入の会社は入っていない。また、夜行列車とは話が変わるが、この前昼行で運行を計画していたFrixtrainを追い出したばかりなので、新規参入の運行会社にとってフランスは鬼門になるだろう

f:id:yokomini:20210409000503j:plain

フランスに乗り入れるAM96(SNCB車)

TEE2.0計画でも蚊帳の外のフランス

 先日発表されたTEE2.0計画にはフランスも参加を表明したのだ。(これはさっきも書いた通り意外だったが)しかし、この発表は各国の運輸大臣が集まって議論されたのだが、その中でフランスの運輸委大臣は全然画面に登場しないのである。それも無理はない。なんと話されていた言語がほぼドイツ語だったからだ。私はドイツ語は何を言っているのかさっぱり分からんので途中で会見を見るのはやめたが、ほぼ話していたのはオーストリアとドイツの運輸大臣であと他に数名画面に映っているだけの人もいた。これでフランスの立ち位置とはになってしまった。

ブリュッセルの立地

 散々、SNCFの悪口を行ってしまったが、ブリュッセルの立地も関係あると思う。理由としてはオーストリアからの夜行を除いて、マルメ発もベルリン発もヨーロッパの北側からやってくる。ブリュッセルTGVやThalysに乗り換えてパリやリヨン方面に行ってくださいという意味合いもあるだろう。また、これもフランスが関係してくるのだが、フランスの場合、全ての高速線が軸重16t以内という制限が設けられているため走行できるのは高速専用電車のみとなる。一方のベルギーはAachen~Liegeの高速線はこの制限がかかるが、Liege~LeuvenやAmseterdamを経由するRegiojetが通るであろうRotterdam~Antwerpの高速線は重い機関車でも走行が可能だ。ヨーロッパの客車の多くが200km/h対応であるため、性能を最大限に活かしてちょっとは時間短縮に貢献できるであろう(飛行機とはもう勝負にならないが)

f:id:yokomini:20200928223250j:plain

多くの高速列車が発着するBrussels Midi

政治的な要因

 この可能性もゼロではないと考える。ブリュッセルと言えばEUの本部がある場所だ。環境活動が大好きなEUとって、大きな宣伝となっている夜行列車が本部の所では運行されていませんとなっては問題になるかもしれないw

 ただ、真面目な話をするとNightjet運行時もかなり無理な運行体制ではあった。なぜかというと、Nightjetの現行の客車では低速時のドアの安全基準がベルギーの基準では満たしていないのだ。そこで、SNCBは車掌をわざわざ用意してAachen~Brusselsまではドアの前で見張らせる対策を取った。改修や、新型車両ができるなり、安全基準を変更するなりすればよかったはずなのに、なぜか人海戦術でやり始めたのだ。しかも、運行開始当初はWienとInnsbruck始発も設定されていたのに、これはわずか運行期間が3か月で終わってしまった。コロナの原因もあるにしろ少なくとも1年で運行が終わる計画であったことには変わりがない。またÖBB側の運行発表もいきなりTwitterで匂わせツイートをするなどいつもとは変わった雰囲気だった。もしかしたら、EU本部側が焦って口出ししたのかもしれない。

f:id:yokomini:20200823223013j:plain

Brussels行きのNightjet